水質汚濁物質

次の物質について水質汚濁物質として政令により環境基準等が定められている。
<生活環境項目>
・水素イオン濃度(pH)
河川及び海域での水質判定項目となっている。
7が中性、7を超えるものがアルカリ性、7未満のものが酸性と定義されている。
・化学的酸素要求量(COD)
海水や湖沼の汚濁の程度を示す。
水中の有機物を酸化剤で分解する際に消費される酸素の量で、数値が高いほど有機物による汚染が進んでいることになる。
・生物化学的酸素要求量(BOD)
河川水や排水の汚濁の程度を示す。
水中の微生物により有機物が分解されるときに消費される酸素の量で、数値が高いほど有機物による汚染が進んでいることになる。
・浮遊物質量(SS)
水中に浮遊している不溶性の物質
・溶存酸素量(DO)
水中に溶け込んでいる酸素の量。
汚染度の高い水中では消費される酸素の量が多いので溶存酸素量は少なくなり、逆に清浄な水ほど溶存酸素量は多い。
水温が急激に上昇したときには減少する。
・大腸菌群数
大腸菌及びこれとよく似た性質を持った菌の数。
大腸菌群が検出された場合、人畜等のし尿の混入が疑われる赤痢菌、チフス菌等の病原菌が存在する可能性がある。
・n-ヘキサン抽出物質
n-ヘキサンにより抽出される物質のことで、油分等がこれにあたる。
<健康項目>
カドミウム(Cd)
・イタイイタイ病の原因物質。
めっき工場や電気機器工場で電解液として用いられる。体内に摂取されると肝臓の機能障害が現れ、次いでカルシウム不均衡による骨軟化症を起こす。
・シアン(CN-)
青酸カリ等で知られる化合物をつくり、これらは一般に極めて強い神経毒性を持つ。めっき工場や製鉄所、鉱山等で使用される。
・鉛(Pb)
化学的に耐久性が高く細工が容易であるため、水道管等に広く用いられているほか、その化合物は顔料、塗料、鉛ガラスの製造、鉛蓄電池等に使用される。少量の鉛を長期間持続的に摂取することにより鉛中毒を起こす。
・六価クロム(Cr6+)
金属クロムは極めて安定な金属で、日用品等に広く利用される。
三価クロムは比較的毒性が低いが、六価クロムは極めて有毒な物質である。
・ヒ素(As)
鉱工業の副産物として得られ、化合物は強い毒性をもつ。体内に入ると排出されにくく、少量ずつ長期にわたって摂取すると慢性中毒を起こす。
・水銀(Hg)
水銀は常温で液体の金属であり、温度計、アルカリ乾電池、蛍光灯等に利用される。一方、有機水銀であるアルキル水銀は有毒で、人体に蓄積されると神経系統が冒され、水俣病の原因物質として知られる。
・ポリ塩化ビフェニル(PCB)
塩素を含んだ合成油の一種で、塩素数により数種類ある。
いずれも化学的に安定で熱媒体、絶縁油、ノンカーボン用紙などに利用されていた。人体に蓄積され毒性が強いため原則として使用が禁止された。
揮発性有機化合物(VOC)揮発性有機化合物のうちジクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、シス-1,2-ジクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,3-ジクロロプロペンが健康項目として水質汚濁に係る環境基準が定められている。洗浄剤や脱脂剤等として使用される。
・チウラム
ゴム加硫や殺菌に用いられるが比較的不安定で毒性が強い。
・シマジン
除草剤等農薬として用いられ、極めて強い毒性を持つ。
・チオベンカルブ
除草剤等農薬として用いられ、極めて強い毒性を持つ。
・ベンゼン
溶媒や各種化学物質の原料として広く使用されるが、中枢神経や血液に作用するほか発ガン性を持つ。
・セレン(Se)
ミネラルの中の必須微量元素のひとつであるが、多量摂取すると嘔吐などの症状を引き起こす。
・硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素
水や土壌中の有機物分解により生成したアンモニウム塩が酸化された最終生成物
・フッ素(F)
フッ素は、少量でも虫歯予防の効果があるが、多量になると中枢神経障害を起こす事が知られている。
・ホウ素(B)
植物、動物の必須元素である。
化合物は、メッキ工場・印刷工場等で使用されており、胃腸障害・中枢神経症状等の中毒症状を起こす。

<要監視項目>
次の物質が要監視項目(知見を集積すべき項目)として指定されている。
クロロホルム、trans-1,2-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロプロパン、p-ジクロロベンゼン、イソキサチオン、ダイアジノン、フェニトロチオン(MEP)、イソプロチオラン、オキシン銅(有機銅)、クロロタロニル(TPN)、プロピザミド、EPN、ジクロルボス(DDVP)、フェノブカルブ(BPMC)、イプロベンホス(IBP)、クロルニトロフェン(CNP)、トルエン、キシレン、フタル酸ジエチルヘキシル、ニッケル、モリブデン、アンチモン、塩化ビニルモノマー、エピクロロヒドリン、1,4-ジオキサン、全マンガン、ウラン